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『森のうわさ』
自分と同じく食料を採りにきていたグラエナとガーディ、
グラエナの口から語られるこの森の不穏なうわさとは・・・?
『森のうわさ』
自分と同じく食料を採りにきていたグラエナとガーディ、
グラエナの口から語られるこの森の不穏なうわさとは・・・?
「本当は怖がらせたくないからあんまり他所の人には話さないんだけど、
あんたはあいつに親切にしてくれたし正直に話すよ。
実はさ、この森のことに関してあんまり良くない話があるんだよ…。」
「良くない話?」
グラエナの表情が徐々に陰っていき、ラグラージもその話に耳を傾けた。
「ああ、この森は普段はあんまり村人も旅人も通りがからないし、
森の中にもともと住んでいるポケモンも昔からほとんどいないらしくてさ、
俺の村のポケモン達はこの森のことを『静止の森』って呼んでいるんだ。」
「確かに、すごく静かで生き物の気配はほとんど感じられなかったな…。」
グラエナの話に思うところがあり、ラグラージも腕を組みながら話を聞いていく。
「だろ、だけどこの森には不気味な噂が流れててさ…。
普段はほとんど物音すらしない普通の森なんだけど、月の出ている晩にこの森の近くを通りがかったポケモン達はみんなこの森の中から何かが蠢くような音を聞くらしいんだよ。」
「蠢く音?」
ラグラージの顔が疑問を持った顔になるが、グラエナの表情は曇ったままさらに口を開いていく。
「ああ、そしてその音を確かめに森に入っていったやつは誰一人として森の中から出てこないらしいんだ…。」
「ただのよくある噂話かなんかじゃないのか? 子供を怖がらせるおとぎ話とか。」
ラグラージはいまいちその話が信じられなく、グラエナを茶化すように語りかける。
しかしグラエナの表情は真剣なものだった。
「確かに、俺だっておとぎ話だって思いたかったよ!
だけど俺はこの話、本当のことなんだと思う…。」
グラエナは訴えるようなまなざしでラグラージを見つめてきた、
ラグラージも少し困惑したがグラエナ声がおかしいことには気づいた、
それは不安を通り越して恐怖が混じった者の声だった、
よく見ると先ほどまでのグラエナのとは打って変わり今の彼は微かにカタカタと震えているようだ。
「どうしたんだ、何かその話が本当だって言える根拠があるのかよ?」
少し語気を荒げながらラグラージはグラエナに話しかける、
するとグラエナは口を引き結び辛そうな表情をしながらも少しずつ口を開いた。
「俺の村のやつも何人かこの噂を確かめるために、月の出ている晩にこの森に入っていったんだ…。
だけど、やっぱり誰も帰ってこなかった…。
月の無い晩にこの森に入ったやつもいたんだけど、
何か恐ろしいものでも見たのかこの森のことを全然話そうともしないし、
しばらくするとこの森から逃げるように村から出て行っちまうんだ…。」
グラエナが顔を上にあげ、まるで空に浮かぶ月をにらみつけるように目を細めながら語っていく。
「俺の友達も面白半分に森に入っていったんだ、ちょうどこんな月の晩にさ…。
俺はバカなことはするなって止めたんだけど、あいつ俺の言うこときかずに森に入っていっちまって…。
結局、何日たってもあいつはこの森から出てはこなかったんだ…。」
グラエナが淡々と語る中、ラグラージはその話を愕然と聞いていた。
そして彼は頭上を見上げるとそこに輝いて浮かんでいる月を確認し、視線をグラエナに戻した。
「その話が本当なのか…?
だったら、あんた達はなんでこんな夜にこの森に入ってるんだよ…。」
ラグラージは顔に冷や汗を垂らしながら、少しでもこの話を否定したくてグラエナに聞いた。
きっと彼がたちの悪い冗談を言ってるのだと信じたかった、
しかしグラエナの表情は先ほどよりも真剣なものであり、その話が冗談の類ではないということを物語っている。
「仕方なかったんだよ、本当は昼間のうちに帰りたかったんだ…。
だけど木の実とりに夢中になっているうちにどんどん暗くなっていっちまってて…。
急いで森から出ようとしたんだけど、道が複雑でなかなか森の外に出られなかったんだ…。」
グラエナも後悔しているような口ぶりでため息をついた。
ラグラージもその話を聞いて怖くなったのか生唾を飲み込んだ。
「とにかく、あんたもおかしなことに巻き込まれないうちにこの森を出た方がいいよ。
俺の話を信用しないにしても用心するに越したことないんだしさ…。」
そういってグラエナは足についた草を器用に払いながら立ち上がった。
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