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僕の触れた手の先、
そこには変わり果てた仲間の姿があった…。

柔らかにふさふさとしていた毛はどろどろに汚れ、
見慣れていた顔はあちこちについたヘドロで覆い尽くされ、
わずかに隙間から見える目は白く濁り、
まるで僕を責めるようにじっと見つめていた…。

声が出なかった、
涙も出なかった。

たださっきまで一緒に歩き、一緒に戦い、
一緒に笑い合った仲間達はもうこの世界にはいないということ、
その否定することのできない事実を受け入れたくなくて、
頭の中が真っ白になる。

僕が逃げなければ助けられたのだろうか…。
あの時たとえだめだと理解していても助けに飛び込んでいれば、
こんな悲しい顔をした最期を迎えさせることだけでも、
それだけでも回避できたかもしれないのに…。

「ごめんなさい・・・。」

僕の口から懺悔の言葉が漏れる、
それはまるで呪詛のようにぽつりぽつりと紡がれていく。

もう手足の感覚はない、
いつの間にか息の仕方も分からなくなってきている。
だけど僕は謝るのをやめない、
自分の体からしゅうしゅうと煙が立ち上がり、
鈍い痛みが僕の体を侵食していっても、
謝り続けることだけはやめない。

これが僕の罪、
仲間を見捨て一人だけ逃げだそうとした、
愚かなリーダーへの罰だから…。




【せんたくだま】


勢いよく飛び出し、
ルカリオはベトべタ-達の群れを飛び越えると、
渾身の力でベトベトンを蹴り飛ばした。

すさまじい衝撃とともに、
ベトベトンの体が横へと吹き飛ばされ、
壁に激突する。

ルカ「やったか…、いや…。」

ルカリオは手足をぐっと身構えるように構え、
敵の反撃に備える。
ベトベターに打撃攻撃が効いていなかったように、
ベトベトンにもパンチやキックの類の攻撃は効いていない可能性がある。

ずるぅ・・・…

ルカ「・・・!」

思ったとおりというべきか、
ベトベトンは驚いてこそいるものの、
大したダメージを受けている様子はない。
それに、
いきなりの彼の登場に驚いていた周囲のベトベター達も、
彼を侵入者と認識したのか一斉に取り囲まれるように包囲される。

ルカ「くっそー…。」

ルカリオの頬に冷や汗が流れる、
なにせ物理系の攻撃が効かないとなると、
かくとうタイプである彼に出来る反撃の手段はほとんどない。

いつもなら打撃が効かない相手には、
『きのえだ』や『ゴローンのいし』などの攻撃用の道具を使うのだが、
さっきの戦いでベトベトにされてしまい使うことができなくなっていた・・・。

ぶんっ…!!

ルカ「うおっと…!」

ベトベター達から容赦なく【ようかいえき】が吐きかけられ、
ルカリオはそれらを慌てて回避する。
やはりこれだけの数を一度に相手をするには無理があった…。

べぇぇとぉぉ~~-・・・…!

突然親玉であるベトベトンが大きな唸り声をあげ、
ルカリオにしきりに攻撃をしていたベトベター達が一斉に攻撃の手を止めた。

ルカ「・・・え?」

彼が驚いて振り返ると、
ベトベトンは手下たちの間をかき分けて輪の中に入り、
まるでこちらを威嚇するように大きく伸び縮みをしはじめる。

ルカ「戦えって言ってるのか…。」

どうやらふいうちでルカリオに攻撃されたことに腹を立てているらしく、
威厳を見せつけるためにも一匹で戦おうとしているらしい。
これはルカリオにとってもチャンスだった。


一対一とはいえ、
進化しているベトベトンの能力はベトベター達とは比べ物にならないくらい高い、
その上ルカリオの攻撃がほとんど効かない以上、
勝てる見込みはかなり低いだろう…。
でも、
勝つのは無理でも呑みこまれた仲間を助け出すくらいならなんとか…。

ルカリオはちらりとベトベトンの腹を見つめる、
大きくふくらんだ液状の腹の部分に、
ぽっこりとふたつ丸く出っ張った部分ができている。
間違いなく彼の仲間達はまだそこにいる…。

ルカ「かならず、必ず助け出さないと…。」


覚悟をきめルカリオは挑発を受けるように拳を構える、
するとベトベトンがその大きな体で猛烈に突進してきた。

すんでのところで攻撃をかわし、
彼は掴みかかるようにベトベトンの腹に手を突っ込む。

ルカ「うえ…。」

彼の手にどろりとしたなんとも言えない感触が伝わり、
ねちゃねちゃと不気味な音が耳に聞こえる。
だが僅かだが、
腹の奥にベトベトンのものとは違うかたい感触に触れた…。

ルカ「見つけ…・・・たぁっ!?」

仲間を引っぱり出そうと隙を見せた瞬間、
ベトベトンの太い腕が彼の顔を力強くはたき、
先ほどのお返しといわんばかりに彼を素早く掴みあげ投げ飛ばす。

ガシィッ……!!

ルカ「アガァッ…!」

すさまじい勢いで壁に叩きつけられ、
ルカリオの体はずるずると壁を伝い床に崩れ落ちる。

ダメージを受けるルカリオにベトベトンは追撃をかけるように、
ヘドロのたっぷりつまった球状のエネルギーをルカリオに向けて投げつけた。

ルカ「くぅ…アグッ…!?」

あまりにも素早い迎撃に、
ルカリオはかわすこともできずにまともにその技を受けてしまう。
【ヘドロばくだん】と呼ばれるその技は、
どくタイプの中でもかなり強い威力を秘めた技であり、
ルカリオの体力が一気に削られてしまった…。

ルカ「あぅ…げほ……。」

体中に走る鋭い痛みに、
彼は立ち上がることもできず呻くことしかできない。
幸いはがねの力を持った彼にどくの技は対して効かなかったものの、
ベトベトンの攻撃の威力があまりにも強く、
もしかしたら当たり所すら悪かったのかもしれない・・・。

おおおぉぉ~~-……!!

ベトベトンはその様子を見て勝利を得たと思いこんだらしく、
大きい腕をあげて自分の力を誇示するかのように吠え声を上げると、
手下達もそれにつられて大きな歓声をあげていた。

ルカ「くっそぉ……ん?」

悔しそうに顔を歪めるルカリオの手に、
ふと何か固い感触のものが触れた…。

ルカリオが自分の手に目線を落とすと、
見慣れた手帳のようなものが彼の手に触れていた…。

ルカ「これって…。」

それは『探検の記録』と呼ばれる探検隊なら誰しも持っている道具だった、
この手帳は持ち主たちの探検中の経験や思い出を自動で読み取り書き記す力を持っていて、
いうなれば一種の日記のようなものだった。

ルカ「なんでこんなものがこんなとこに…。」

見てみると部屋の隅には彼の持っているものと同じような探検バッグや、
その他色々な鞄や袋などが所狭しと積み上げられていた…。

ルカ「まさか…、奴らの犠牲者のものか…。」

そこに積まれているのは、
こいつらの『食事』にされてしまったポケモン達の遺品。
どうりで誰も立ち寄らないはずである、
立ち寄った者達が帰ってこれなければ、
誰もここに来ただなんて他の物に伝えられないのだから…。

ルカ「僕達ももうじき…。」

ルカリオは唾をごくりと飲み込む、
このままでは本当に助けることもできないまま、
この荷物の持主たちと同じ末路をたどることになる…。


ルカリオは戦いの間もずっと手に握りしめていたふしぎだまを見つめる、
カメールから託された最後の希望。
依頼品であるということにすこしためらいがある物の、
今はもうこれを使うしか助かる可能性は残されていない・・・

ルカ「くっ、くら…・・・!?」

ふしぎだまを使おうとした瞬間、
ルカリオに奇妙な感覚が走った。
いつもなら簡単に力を発動させるふしぎだまの扱い方が、
まるで一瞬のうちに忘れてしまったとでもいうかのように思いだせないのである…。

ルカ「え…なんで…!?」

ルカリオは頭の中で何度も念じて力を使おうとする、
しかしふしぎだまは一向にその力を発揮してはくれなかった。

絶望の表情を浮かべてルカリオがふしぎだまを見つめていると、
ずるずるという聞き慣れてしまった音を響かせて、
ベトベトンが彼の前に立ちふさがった。

ベトベトンの顔には醜悪な笑みが浮かべられており、
その腕からは不思議なオーラが立ち上り、
ルカリオの体を包み込んでいた。

やられた…!

【さしおさえ】、
手持ちの道具が使えなくなってしまう技、
知らないうちにルカリオはその技の支配下に置かれてしまっていたのである。
いつでも発動できるようにと、
ふしぎだまを持ち続けていたことが、
ここでまさかの最悪な判断ミスとなってしまった…。

ルカ「うあ…うあああ……。」

ルカリオの歯がカチカチと震え、
持っていたふしぎだまと手帳をぎゅうっとにぎりしめて、
舌なめずりするベトベトンを見つめる。

終わった、
もはや反撃する体力も、
唯一の希望だった道具も使用できなくなり、
彼に残された手段は本当に0となってしまった…。


絶望に沈むルカリオの体を、
ベトベトンは獲物を見つめる目つきでじぃっと見つめる。
そしておもむろに口を大きく広げると、
彼の頭を覆い隠すように顔を近づけてきた。

ルカ「あ…ああ…・・・。」

じわっと目尻に涙が浮かび、
恐怖のせいで体全体が弛緩してしまったかのように力が入らない、

だがベトベトンの口の奥にかすかに赤い炎が見え、
彼の意識が一瞬正気の物に戻る…。

ルカ「あ・・・。」

バクンッ……!!

彼が口を開きかけた瞬間、
ベトベトンの口が彼の体を包み込み、
凄まじい悪臭とべっとりとした液体の感触が彼の意識を侵食していく。


ルカ「うむぅ……むぅ…。」

ルカリオの鼻や口にベトベトンの肉体が張り付き、
呼吸をすることさえできなくなるが、
彼は残った目で必死に仲間の姿を探す。

ルカ「むぅ・・・…、むぁ…!!」

ぐにゃぐにゃと蠢く口内の中で、
突然ルカリオの体が何者かにつんつんとつつかれる。

振り向くと、
ライボルトとリザードの二匹がぐったりと横たわりながらも、
ルカリオに手を伸ばし笑みを浮かべていた。

ルカ「・・・!」
ライ「なんだ、けっきょくお前も飲み込まれちまったのか…。」
リザ「ごめんね、僕らのせいでルカリオまで…。」


ルカリオの目からぽたりと一粒の涙があふれる、
ふたりとも疲れ果て見るも無残にべっとりと汚れているものの、
こうして生きた姿でもう一度会うことができたのが何よりも嬉しかった。

ライ「おい泣くなよ、まだ無事に脱出できたわけじゃないだろ・・・!」

それでもルカリオはぽろぽろと涙を流す、
まるで止め方を忘れてしまったように泣きじゃくってしまった。
だが彼の涙に洗い流されたのか、
彼の口と鼻を塞いでいたヘドロがトロトロと溶けるように流れていった…。


リザ「あはは…、ルカリオがなくとこなんて初めて見たよ。」
ルカ「うるさいな…、心配したんだから…!」

ぐしぐしと涙を拭き、
ルカリオはふたりの無事をもう一度確認する。
二匹ともやはり彼と同じくダメージが酷いらしく、
ライボルトは体中をベトベトンに包みこまれ、
リザードはどくを受けているのかぐったりと横たわったまま会話するのも苦しそうだった…。

突然ベトベトンの体内がぐにゃぐにゃと動きはじめ、
彼ら三匹の体を口の奥に運ぼうと、
大きな舌べろがうねうねと蠢きだした。

ライ「く…、どうやら本気で消化活動を始める気みたいだな…。」
リザ「やっぱり、ここまでなのかな…。」
ルカ「…いや。」

すぅっとむっとする空気を吸い込み、
少しでも心を落ち着けようとルカリオは思考を探る。

確かにさっきまでは本当に心細かった、
一匹では何もできないということを思い知らされた気さえする。
だけど今なら一匹じゃない、
まだ何か手は残されているはずだった…!

ルカリオは握りしめていたふしぎだまを前にかざす、
リザードとライボルトはそれを不思議そうな表情で見つめた。

ライ「これは…?」
ルカ「ここから脱出出来るかどうか、全部このたまに賭けられてくる…。」

ルカリオはカメールの言葉を思い出す、
必ず力になってくれると言っていた玉、
ひとつは彼の力、
もう一つは仲間全員を助ける力、
それぞれの力が込められていると…。
ルカリオは簡単にだが二匹にそのことを説明する。

だけど、
今この状況でどちらを使えばいいのか彼には分らない、
分かったとしても彼には【さしおさえ】のせいでこのたまを使えない…。
使えるとしたら目の前にいる仲間たちだけ…。


だんだんと体内の動きが活発になってきていて、
あの【ようかいえき】もぽたぽたと分泌され始めてきている。
もうあまり時間は残されていない…。


ルカリオは少し迷った挙句、
リザードにふたつのふしぎだまを手渡す。

リザ「うえ…!?」
ルカ「リザード、君が決めてよ。」
リザ「え、なんで僕なの…!」
ルカ「ライボルトの今の状態じゃふしぎだま使えない…。」
ライ「…まあな。」

ライボルトは憎々しげに自らを包む肉体を睨みつける、
体力を使い果たした今の彼にはこれをどけるだけの力は残っていないだろう…。

ルカ「だからリザード、君に全部任せるよ。」
ライ「恨みっこなしだ、早いとこ決めてくれ…。」
リザ「そ、そんなぁ…。」

ルカリオは心の中でリザードに謝る、
彼がこういう重要な決断を任されることを苦手にしていることは今の様子から見ても分かる、
だが今は時間がない。

リザ「…本当にうらみっこなしでいいんだね…?」
ルカ「うん。」
ライ「ああ。」

ルカリオとライボルトはリザードの言葉にうなずく、
どんな結末になっても後悔などしない、
強い信頼を彼はリザードに示した。

リザ「じゃあ、いくよ!」

そう言ってリザードは片手にあるふしぎだまを高く掲げあげ、
ふしぎだまの力を解放するように強く念じた。



その瞬間にふしぎだまから淡いブルーの光が解き放たれ、
彼ら三匹を包み込むように不思議な魔力が空間に満ちるのを感じる。

刹那、
彼らの頭上、
ベトベトンの頭の上から激しい水流が轟くような轟音を響かせ、
部屋全体を洗い流すかのように水が駆け抜けていく。


これに驚いたのは直撃を受けたベトベトンである、
いきなり激しい水流に体全体が叩き潰されたかと思うと、
水に洗い流されるように彼の体が徐々に小さくなっていく。

他のベトベター達もその水流の出現にパニックになったのか、
彼を見捨ててどんどん部屋の中から逃げ出していく。
彼も早くこの部屋から逃げ出したかったのだが、
お腹の中に詰め込んだ三匹の重さが仇となり、
見る見るうちに彼の体が溶けて流れ去っていく。

おおぉぉおおぉおぉおぉぉ…………。

ベトベトンの絶叫のような悲鳴が部屋中に響き渡り、
彼の体は綺麗に水流に洗い流され溶けていってしまった。



部屋の支配者が消えた中、
かつての主がいた場所に、
三匹のポケモンがぐったりとそろって倒れている。

彼らはまるでで互いを信頼し合うかのように、
薄暗くにごったふしぎだまを握りしめたまま気絶していた…。


その8でございます、
あいかわらず超がつくほど長ったらしくてすみません。
書きたいこと書いてくとどんどん長くなるなぁ、
短くてもつたるような文章が書けるようになるのが、
今後の課題かしら?

それにしても書きながらふと思ってしまったんですが、
捕食関係なくなってきてなry…
(ひぃ、それだけは気づかないようにしていたのに…。)

とゆうかあれですね、
力をかける所を間違えたとゆう感じですね、
もっと取り込みシーンとか色々書きたいことあったのに、
表現の仕方分からなくて書けなかったっていうそんなオチですね!
(。ω。)ウッヒョウ!

自分のレベルを考えた作品作りなさいって言うGODからの警告ですかね、
謹んでお受けします神様。orz

なんだかんだで次が多分今シリーズのラストでございます、
こんなへっぽこ小説ですが、
最後までよろしくお願いします。
(・ω・)
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★ プロフィール
HN:
森クマ
性別:
男性
自己紹介:
展示するのも恥ずかしい物しか置いていませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
(・ω・)

諸注意:
初めてきてくれた方は、
カテゴリーの『はじめに』からの
『注意書き』の説明を見ていないと
色々と後悔する可能性大です。
(・ω・´)

イラスト・小説のリクエストは
平時は受け付けておりません。
リクエスト企画など立ち上げる際は、
記事にてアナウンスいたしますので、
平時のリクエストはご遠慮くださいませ!
(・ω・`)

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『絵チャット入口!(・ω・)』


  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  (・ω・)  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  (・3・)  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  (・д・)  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  (・ω・)  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  (・3・)  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  (・д・)  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  


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更新日 2014年  1月17日
  少ないけどとりあえず新規イラストに変更
  一枚オリキャライラストなので苦手な方注意

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