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『ベトベター』はのみこむをくりだした!
×××に35のダメージ!
×××はたおされてしまった!

   ▼



ここで記録は途切れている…。




ベストフレンド

ルカ「ふぅ……。」

ルカリオはため息をついて手帳を閉じる、
あの部屋にあった誰かの最後記録、
終わってしまった物語である。
それをを読み返すというのはやはりいい気分はしない…。

ルカ「これも持ち主はわからなそうだな…。」

彼はもう一度小さく溜息をつくと、
持っていた手帳を静かに草むらに置いた。

彼は地下道の外の広場に座り込んでいた。
あのベトベトン達をしりぞけたあと、
彼はそのまま気を失ってしまっていたが、
気づいたら地下道の外に連れ出されていたようである。

彼を運び出してくれた人物たちはというと…。

ライ「おい、ルカリオさぼってないで手伝えよ!」

彼を呼ぶ声に、
ルカリオは顔を上げる。
少し離れた地面にいくつもの土盛りを作りながら、
足を泥で汚したライボルトが声を上げていた。

ライ「まったく、何で俺が穴掘りなんぞ…。」
ルカ「そのわりには楽しそうに穴掘ってたけど…。」
ライ「あぁ…?」
ルカ「いや、なんでもない!」

ライボルトが機嫌悪そうな声をあげ、
ルカリオはふいっと目をそらす。

よく分からないが、
彼を犬扱いするといつもこんな風に機嫌悪そうな声を上げるのだが、
ついついそのことを忘れて言ってしまうのである。
自分も同じ犬のようなポケモンだから抵抗が無いのだろうか……?

ライ「たく…、そういえばリザードの奴は?」
ルカ「さぁ、さっきどっかに歩いて行ったけど。」

ルカリオの言葉に、
ライボルトはうっ…と眉をひそめる。
リザードが一匹で出歩いているというところに引っ掛かりを感じるらしい。
まぁ、
ルカリオ自身も同じことを考えていたのだが。

ライ「またどっかで迷子にでもなってんじゃないか…。」
ルカ「さすがにそれは…。」
リザ「お~い。」

二匹が話していると、
茂みの奥から間延びしたリザードの声が聞こえてきた。
ふたりが顔を向けると、
リザードが両手にたくさんの花を抱えこちらに歩いてくる。

ライ「……なにやってるんだ?」
リザ「なにって、お墓にはお花をお供えしなきゃと思って…。」
ルカ「よくそんなにいっぱい見つけたね…。」

花を供えるという気持ちは分かるが、
いくらなんでも多く持ってきすぎではないかと思う。
なにせライボルトと同じ大きさくらいの小山ができるくらい、
たくさんの色とりどりの花が彼の両腕に抱えられていたのである。

ライ「お前なぁ、量ってのを考えろよな…。」
リザ「だって、すごく綺麗な花畑があっちにあったんだもん。」
ライ「だからって…。」
リザ「それに…!」

ライボルトがさらに文句を言おうとするのをリザードが止める。

リザ「それに…、何人分持ってきたらいいか分からなかったし…。」

リザードの悲しそうな声に、
ライボルトとルカリオもうつむいて土盛りに目を向ける。

これらは彼らが簡単に作った『お墓』であった、
ルカリオの提案であの部屋にあった犠牲者達の荷物を運び出し、
日にあたるこの場所に埋めてあげたのである。
少なくとも、
あの薄暗い地下空間に置き去りにするよりは、
いくらかマシであろう…。

ライ「…しゃあねえな、ほらさっさと供えてやれよ。」
リザ「う…うん!」

ライボルトがひらひらと前足を振ると、
リザードが少しうれしそうにして『お墓』に駆けていく。
ルカリオも置いていた手帳を拾うと彼の後を追い、
小さな小山に花を供えていく。

そしてひとつの小山の前に立った。



ルカ「…。」

ルカリオはその墓の前に膝をつくと、
持っていた手帳を静かに土盛りの前に置いた。
この小山にはこの手帳の持ち主たちの荷物が埋められているのである。

ルカ「あなた達の記録、読ませてもらいました…。」

ルカリオは手帳を見つめながら、
小声でぼそりと呟いた。

名前も知らない探検隊の記録

彼らもルカリオ達と同じくおたずねものを追ってこの地下道にやってきて、
ベトベター達に襲われてしまった。
違っていたのは、
助かったか助かっていないか。
でも、
もしかしたらルカリオ達だって…。

ルカ「…そう。」

ルカリオだってもう少しで仲間たちを見捨てて逃げだしていたかもしれない。
むしろもしあそこでカメールが現れなければ、
あの部屋にたどり着く前に彼らの物語も終わっていただろう…。

ルカリオはそっとトレジャーバッグを開き、
ひとつのふしぎだまをとりだす。
傷つきぼろぼろになったふしぎだまだが、
まだ力を解放していないらしく、
淡いほのかな光がたまの中で優しく輝いていた…。

リザ「何見てるの…?」

ふいに声をかけられ、
ルカリオはリザードの方に振り向く。
ほとんど供え終わったのか、
もうその手にはほとんど花は残っていなかった。

ルカ「ねえリザード、なんであのとき『あの』たまの方選んだの…?」
リザ「あ、やっぱ気になる?」
ルカ「それはね…。」

忘れもしない、
ベトベトンの腹の中で最後の希望としてリザードに選ばせたふしぎだま、
その力によって彼らは無事に生き延びることができた。

ただ、ふたつあったふしぎだまのうちリザードの使ったものは…。

ルカ「あれ、『僕だけ』が助かる奴の方だよね…。」
リザ「うん、まあね…。」

リザードが選んだのは、
カメールから彼自身の力になると言われたふしぎだまだった。
あの状況で、
なぜそっちのたまを選んだのか今まで不思議でしょうがなかったのである。

リザ「あのね、
   実はルカリオが呑みこまれるちょっと前に、
   僕達もあいつのお腹の中で目が覚めたんだ…。」

リザードはその時の様子を思い出したのか、
ぶるっと体を震わせる…。

リザ「でも外からルカリオの声が聞こえてきてさ、
   その時ふたりで決めたんだ、
   ルカリオだけでもいいから助けようって。」
ルカ「え…、なんで…!」

リザードのあまりの言葉に静かに聞いていたルカリオは思わず声を上げる。
ルカリオが必死の思いで助けに行ったのに、
なぜ彼のことだけを助けようとしたのであろうか…。

たしかにあの状況で全員が助かるかどうかなんてわからなかったが、
それでもなんで自分たちじゃなくてルカリオだけを…。

だが、
リザードはにっと満面の笑みを浮かべながら答える。

リザ「仲間だもん、あたりまえでしょ♪」
ルカ「あ…。」
リザ「それに危険なとこにわざわざ助けにきてくれたんだもん、
   そんな仲間を危険な目に合わせたくないのなんて当たり前だよ。」

えへへっと恥ずかしそうに笑っているリザードを見て、
ルカリオはふっと軽く笑う。

同じだったのである、
彼が自分を犠牲にしてでも仲間たちを救おうとしていたことも、
彼らが自分たちを犠牲にしてでも自分を救おうとしていたことも、
立場が違えど思うことは一緒なのである。

だって、
それが仲間なのだから…。

ルカ「そっか…。」

彼はリザードから目をそらすと、
持っていたふしぎだまを見つめる。

この玉に秘められた力を彼らは知らない、
もしかしたらリザードの選んだたまよりも、
こちらの方がすごい力を秘めていたのかもしれない…。

でも、
それでもルカリオはリザードの選んだたまでよかったと思う。

三匹を助けるたまなんて今は必要ない、
自分の苦手なことは仲間たちに、
そして仲間の苦手なことは自分が行う。
そうして彼ら三匹は活動をしてきたということを思い出したから…。

ルカリオは今回の冒険は、
仲間の信頼をもう一度思い出すきっかけになったと思う。
知らないうちにひとりで背負いこんでいる気分になっていた自分が、
なんだか笑ってしまうくらいに恥ずかしかった…。

ルカ「ふふっ♪」
リザ「…なに、いきなり笑って…?」
ルカ「ううん、なんでもない!」
リザ「?」

そう言いながら彼は元依頼品であるふしぎだまをバッグにしまう。

ルカ「さあ、帰ろう。
   街に帰って依頼品の弁償をしなくっちゃ。」

ライ「うわ、久しぶりに手痛い出費だな…。」
リザ「今夜のご飯のおかず、期待しない方がいいかもね…。」

意気揚々と歩きだすルカリオの後ろで、
二匹の嘆くような声が聞こえてくる。

それを聞きながらも、
ルカリオは気分よさそうに歩いていく。

彼は久しぶりに心が軽くなった気がしたのである。

一人では支えられないものでも、
三人なら支えていけることが分かったから。

そして三匹は昼間の明るい日差しが広がる、
森の外ヘと歩いて行った。




三匹はひとしきり花を供えた後、
仲よさそうにしながら広場を去って行く。

そんな彼らの後ろ姿を、
一匹の青いポケモンが眩しそうに目を細めて眺めていた…。

カメ「よかったね、
   君は大切なものを助けられたみたいで…。」

カメールの表情は寂しそうに笑っていた。
かつてルカリオ達と同じものを持っていたのに、
彼はそれを失ってしまった。
もう取り戻せるかどうかさえ分からない…。

カメ「なんかついつい助けちゃったなぁ。
   オイラと同じ目にあうポケモンなんて、少ない方がいいもんね…。」

カメールはくるりと振り返り、
地下水道の入り口を懐かしい景色でも見るかのように眺める。

かつて彼の親友と何度この場所を通っただろうか、
そのころは、
あのベトベター達の捕食行為を彼の親友が見つけるたびに止めていたから、
あいつらもここまでひどい狩りをしなかったのである…。

だが、
彼の親友がここを訪れることは多分もうない。
そして彼自身もここに来ることはもうないと思う…。

カメ「ヘルガーの奴には悪いことしちゃったかな…。」

そういってカメールは包帯代わりに布を巻いた肩に触れる。

かつてそこに彼の所属を示す刻印が示されていた場所、
そして彼がそこから逃げ出す際に、
追手のポケモンの【かえんほうしゃ】で焼かれた場所…。

隙をついて逃げだすことには成功したが、
軽傷とは言い難いやけどを負ってしまったいた。

まだ少しひりひりとするものの、
持っていた薬である程度の治療はできたはずである…。
それにさすがの追ってたちも、
まさかまだ彼が街の近くをうろうろとしているとは思ってもみないだろう。

逃げ出すなら今のうちである…。

カメ「…ふぅ、そろそろ行こうかな…。」

そういってカメールは、
ルカリオ達とは反対の方向へと歩きだした…。

暗く静かな森の中の道、
その先に何が待っているのかは分からないが、
辛い思い出のあるあそこにはもう戻りたくなかった…。

そして彼の姿は森の中へと消えていく、
彼の不安な心境でも現すかのように、
木々の葉っぱが風にあおられざわざわと嫌な音を立てていた……。
…。


その9、
並びにラストでございました。
ここまでお付き合いいただいた方、
本当にありがとうございました。

しかし、
最後まで長かった…。(文章量的な意味で)

休みの前の日だから、
ついつい張り切って書き始めたら、
日付変更も忘れて書いてたんだぜ!
トランス状態って怖いね…。

とりあえず今回のシリーズは初めての取り込み捕食ということもあってか、
個人的に力量足をもろに感じたシリーズだったかな?
体調やらなんやらを皆さんに心配していただいたこともあって、
なかなか波乱万丈な製作期間でしたね、
いい経験にはなったと思います。

とりあえず、
今シリーズをもちまして学生にとっての地獄のような期間に突入するので、
しばらくはまったりペースな更新になります。
まだ修羅場ってほどじゃないから、
たびたび更新はすると思いますが、
毎日は無理かもしれません。

なんも事前報告もなしにお休みすることもあると思うので、
その時はゴメンネ。

なので7月から8月の頭(仮)までは、
単発の絵とかでも描いてこうかなと思っております。
久しぶりに、
喉とか喉とかあと喉とか描きたいなぁ…。

ともかく長々とここまで読んでいただきありがとうございました!
(・ω・)
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★ プロフィール
HN:
森クマ
性別:
男性
自己紹介:
展示するのも恥ずかしい物しか置いていませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
(・ω・)

諸注意:
初めてきてくれた方は、
カテゴリーの『はじめに』からの
『注意書き』の説明を見ていないと
色々と後悔する可能性大です。
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イラスト・小説のリクエストは
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リクエスト企画など立ち上げる際は、
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平時のリクエストはご遠慮くださいませ!
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更新日 2014年  1月17日
  少ないけどとりあえず新規イラストに変更
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