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危機と一髪


ルギ「…むおっ!?」

突然アーボの口からマッスグマが吐き出され、
なにより驚いたのはルギアであった。

さきほど別行動したばかりの親友が、
突然自分の食べている獲物の中から姿を現したのである。
驚かない方がおかしかった。

…ズルッ…ズルゥ……

彼がぽかんとしいている間に、
アーボの口からマッスグマの体がずり落ち、
唾液の糸を引きながら森に向かって落ちて行った。

ルギ「…む、いかんな…!」

慌ててルギアはホバリングの体勢を解くと、
急降下するように羽をたたみ急いでその後を追いかける。

…しゃっ…・しゃぎゃぁっ……!!

ルギアの口に垂れるアーボが風圧で頬にびたんと押し付けられ、
身動きとれないほど体中がめりめりと嫌な音を立てているが、
かまっている暇すらないのかルギアは構わず速度を上げていく。

力なくぐったりしたまま、
マッスグマの体はぐんぐんと速さを増して落下していくが、
ルギアの飛行速度なら回り込むのは訳もないことだった。

落ちる彼より先に回り込んで捕まえれば…。

ルギ「…むぅ、森が近すぎるな…。」

ふと、ルギアに迷いが生じる。

回り込んで捕まえようと思ったのだが、
彼らがそれほど高く飛んでいなかったためか、
森と彼らとの距離が近すぎるのである。

このまま回り込んでしまえば彼の体が森の中に突っ込んでしまい、
その衝撃と巻き起こる風圧で森の大半が吹き飛んでしまうだろう。

せっかく見つけた美味しい木の実のなる森だ、
できることならそれは避けたい…。
それに彼らが突っ込む場所にこの森に住むポケモン達がいたら、
それこそ大参事になりかねなかった。

ルギ「ふむ…、さてどうするか。」

ルギアはなんとかならないかと、
親友を追いかけながら考え込む。

彼の性格ゆえか周りの者も忘れそうになるが、
彼は本来強い力を持った伝説と呼ばれる種のポケモンである。
いわゆる伝説のポケモンといわれる強大な力をもつポケモン達にも、
いくつかの制約や法がある。

そのうちのひとつが、
「自身の力でいたずらに自然の環境を変えてはいけない」というものである。

ルギアが自らの力を全力で行使すれば、
この森…いやこのあたりの地域一帯を吹き飛ばせるくらいの力を持っている。
それが伝説と呼ばれる種の強さなのである。

だが当然この世に生きる伝説のポケモンはルギアだけではない、
そこらかしこでそのポケモン達が自然を変えかねない力をふるっていたら、
あっという間に世界全体が滅んでしまうだろう。

だからこそ彼らの力を縛るための『約定』というのが存在するのでる。
それに反すれば当然それなりの制裁も行われ、
それを守ることも強大な力を持つものの責務なのである。

もっともその『約定』を守りさえすれば、
他は何をしていいという自由さも兼ね備えているため、
ルギア自身その『約定』に縛られている気はさらさらないのだが…。

とにかく森を破壊してまでマッスグマを助けるのは却下、
非情なようだがこれだけは仕方がない…。
かといってこのまま見捨てるわけにもいかなかった。

ルギ「むぅ…、ならばっ…!」

ルギアは別の方法を試すべく、
意識を集中させると【サイコキシネス】のオーラを体にまとわせる。
回り込むのがだめなら動きを止めようと考えたのである。

ルギアの体から青白い光が飛ばされ、
マッスグマの体めがけて飛んでゆく。

だがかすりまではいくのだがなかなか命中しない…。

ルギ「くぅっ、当たらんな…。」

なにせただでさえも落下という移動をし続けるマッスグマに対し、
ルギアの方もそれを追いかけるべく絶えず移動し続け、
さらにそこから集中力の使うエスパー系の技を放っているのである。
そのためかなかなか捕えられないでいた。

そうしている間にも森の木々がどんどんと近づき、
もう1分もない間にマッスグマの体が墜落してしまうだろう。
あの小さな体だ、
さすがに墜落の衝撃には耐えられないだろう…。

思考する時間はほとんど残っていなかった…。

ルギ「むぅ~………、
    ……仕方ないか…。」

難しい顔で考えていた彼だが、
何かの結論に達したのか急にふっと不満そうな表情に変わる。

そして今の今まで口の端にひっついていたアーボを、
横目でちらりと見つめるとふぅっと溜息をついた。
ふいに視線を向けられ、
アーボはおびえたようにびくっと体を震わせる。

ルギ「できればお前を食べてやりたかったが、
    飲み込んでいる時間すら惜しいのでな…。」

アーボはそのルギアの目を見てごくっと息をのむ。

アーボのことを生き物としてではなく、
まるで食べ残しを惜しむかのようなその目がなんだかとても恐ろしかった。

ルギ「残念だがあきらめるしかないか…、
    あいつめ後で責任をとってもらうからな…。」

ぶつぶつと文句を言っていたルギアだったが、
すぅっと小さく息を吸い込むと、
ぺっと勢いよくアーボの体を口から吐き出した。

しゃっ…?ぎしゃああぁぁぁっ……!!!

いきなり自由を取り戻したアーボだったが、
当然飛行ポケモンではない彼の体が空中でどうにかなるわけは無く、
なすすべなく森の中へと落下していった。

森の方へと落ちていくアーボの姿を惜しそうに見ながら、
ルギアはさきほどより速度を上げてマッスグマを追いかける。
というより、
ほとんどルギアも落下に近いほどぐんぐんと森に近づいていく。

ルギ「もう少し…もう少し……この辺りだな…!」

あっというまにルギアの鼻先がマッスグマに近づき、
気絶している親友の姿を完全に視界に捕えた。

ルギ「今回は非常事態だからな、後で怒るなよ。」

そうぽつりとマッスグマに語りかけると、
ルギアはぐばぁっと大きく口を開き……。

バグンッ…!!

そのまま親友の体を丸ごと口の中に収め、
すぐに口を閉じぎゅっと開かないように結ぶ。
ぼよんとマッスグマの体が舌の上で一度弾むと、
そのままぐったりと横になった。

ルギ「よし、後は…。」

マッスグマをなんとか保護し、
安心したのもつかの間ルギアの体が森の上に衝突しそうになる。

バサッ!バサァッ…バサァ…!!!

ルギアは地面に向かって大きく翼を羽ばたかせると、
凄まじい風圧を巻き起こし彼の体が反動でブレーキがかかる。

ルギ「ここまではいいな…、後は…!」

落ちる速度が少し緩やかになると、
ルギアはぐっと意識を集中させ彼の体中に青白いオーラがまとわれる。

すると彼の体が突然飛び跳ねる様に空に向かって飛びあがり、
あっという間に森との距離をとってしまう。

ひゅんと風を切るように空高くへと昇り、
落ちる危険が無さそうなところまで昇ると彼は意識の集中を解いた。

ルギ「…ふぅ、うまくいったようだな…。」

ききぃっと空中で停止しながら、
ルギアは疲れたように額の汗をぬぐった。
ルギアの周りには青白いオーラがまとわれていたが、
その光も彼がホバリングの体勢に戻るとすぅっと消えていった。

マッスグマを捕えるために放った【サイコシネシス】だったが、
彼は自分の体を停止するのに急遽変更したのである。
目論見はうまくいったようで、
何とか森にぶつかることなく済ますことができたのだった。

まあ風圧で木が曲がるぐらいはしただろうが、
それくらいは…まあいいだろう。

ルギ「…おい、大丈夫か…?」

落ち着きを取り戻すと、
ルギアは口の中にいるマッスグマを舌先でつんつんと突く。
反応こそぴくりともしなかったが、
微かにすぅすぅと寝息を立ているようで、
ルギアはふぅっと安心したように息を吐いた。

れろれろと眠ったままのマッスグマの体を舐めてみる、
あいかわらず美味しい肉の味が口中に広がり、
そのまま飲み込みたい気分になってくるがぐっと我慢した。

ルギ「まったく、あまり世話を焼かせるな。」

ルギアは眠っている隙に親友の味だけを何度も楽しみながら、
つらつらと思いにふけり始めた。

ルギアから見て、
このマッスグマは変わっていると彼も思っていた。

普通なら伝説である彼を見たポケモンは、
恐れおののくか畏敬の眼差しで見つめてくるかのどちらかである。

それこそ以前彼が食べ逃した黄色いポケモンのように、
彼の姿を見るなり逃げ出すポケモンだっているのである。

現に最初にこのマッスグマと出会ったころは、
彼だって恐ろしい化け物でも見るかのように見ていたような気がする。
失礼な話だが仕方のないことだとルギアも考えていた。

だがマッスグマはなぜかその後も彼のもとにとどまった。

しかも伝説である彼と対等に接し、
あまつさえ口うるさく彼をしかりつけてくるような者なんて、
長い間生きていたルギアだって見たこと無かった。

そんなマッスグマを彼自身も興味深く観察している。
もちろんその味や食感にも興味があったが、
同じくらいその考え方に興味を持っていた。

何年も一匹で生きてきていたルギアにとって、
親友の存在が大きくなってきたのを知らずうちに感じ始めていたのであった。

くるっと眠ったままのマッスグマを舌で包むと、
ルギアは空中でひょいと体を旋回させ、
最初にいた広場に戻ろうとすいーっと泳ぐように飛行していく。

彼の口の中では、
安心した表情で静かに眠り続けるマッスグマが、
くぅくぅと寝息を立てているのであった。
 

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のみこむとはきだす


力無く垂れるアーボの体が、
ルギアの口の中にちゅるちゅると吸い込まれていく。
すでに首の黄色い模様のところまでが口内に収まり、
口の中では太く大きな桃色の舌の上で横たわっていた。

ルギ「んぐんぐ…、やはり大きな奴は食べ応えがあっていいな♪」

……しゅぅぅぅ。

喉の奥から楽しそうに彼を食べていく奴の声が聞こえ、
アーボは唸り声にも呻き声にも似た声を上げる。

何匹も何匹もポケモンを喰らってきたアーボである、
当然食べられた獲物が腹の中でどうなってしまうのかぐらい知っていた。
だからこそ、
自分が食べられてしまうというこの状況にとてつもない恐怖を感じていた。
何としてでも逃げ出さなくてはいけない…!

ビチャ…ビッタン…ビタッ…ビタンッ!!

彼はルギアの口の中で飲み込まれた胴体を力任せにのたうちまわらせた。

粘着質な音を立てて彼の尻尾が肉壁を打ち、
そのたびに舌や喉が弾む様にぼよんぼよんと揺れる。
彼の体がますます涎まみれになるが、
それでもかまわず体を叩きつけ続けた。

ルギ「むぅ、くすぐったい…。」

もぞもぞと動き回るアーボの感触に、
ルギアはくすぐったそうに頬を緩める。
だがやはり体格差もあってか、
アーボの必死の攻撃もダメージにはなっていないようだった。

…しゅぅ…しゅぅ…っ!

ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、
のたうっていた彼の動きがだんだんと鈍くなってくる。

ルギ「…おとなしくなってきたか、じゃあそろそろ食べていいか?」

アーボの動きが弱くなってきたことを確認し、
ルギアは飲み込む準備かペロペロとアーボの体を舐めあげてさらに滑りを良くしていく。

ぴちゃ…ぴちゃ…レロレロ…♪

せわしなく舌を動かしてアーボの体を隅々まで舐めまわし、
そのたびにアーボの口から悲鳴にならない声が漏れる。

…しゅ…しゅぅぅぅ……。

舌が這わせられるたびにぬるぬるとした質感が彼を包み、
少しずつ彼の力が吸い取られていくような気さえしてくる。
だがじんわりと包み込んでくる舌や肉壁が妙に暖かく、
だんだんとその軟らかい感触が気持ちよくさえ感じてくる。

それが余計に彼から抵抗する気力をそぎ取っていたとも知らずに…。

ルギ「……そろそろいいかな…?」

そしてルギアは空を仰ぎ見るようにゆっくりと顔を上に向けると、
自重で落ちてきたアーボの体をぐびぐびと飲み込み始めた。

んぐっ…んぐんぐっ……ゴクッ…ゴクゴク…!

…ぎゅう……クァァァッ!

あっという間にアーボの胴体が飲み込まれていき、
ぬるりと肉の管の中に落ちていく感覚に思わず悲鳴を上げる。

ずぶずぶと喉の奥に滑りあのぷっくりと膨らんだ部分もずりゅずりゅと落ち、
ずるんと音を立てて喉の奥へと消えてしまう。

……すると。

…グニュ……グニャグニャ…!

ふとアーボはお腹の方に何か違和感を感じる。
何かがお腹の中でぐにぐにと蠢いていて、
まるでお腹の内側から外に向かって腹を押しているような感触だった。

もしかして彼がさっき飲み込んだ奴が目を覚ましたのだろうか…?

アーボは一瞬暴れるのをやめさせようと腹に力を込めようとしたが、
すぐに興味を無くしたように力を抜く。
どうせここでこいつがなんかの奇跡で彼の腹から抜け出たところで、
そこも腹の中なのである。
もうすぐ彼と一緒に飲み込まれ、
彼と一緒にどろどろに溶かされて栄養になる運命なのは変わらない…。

そう思うと今ここで無理にこいつを抑え込むのも馬鹿馬鹿しい気がして、
いっそ好きにさせようと彼はあきらめたように目をつむった…。
いっそ飲まれるなら苦しくないように飲み込んでもらいたかったのである。

だがここで少し変化が起きた…。

ルギ「ふぅ…、さすがにこう長いと飲み込むのも大変だ…。
   ああ疲れた…。」

ルギアの口から疲れた様に溜息が洩れる、
アーボの体を飲み込むのは良いが、
その体が長すぎて飲み込むのも結構な重労働だった。

しかも食べ応えがあるとはいえほとんど味がしない相手なのである、
ずっと食べているのも飽きてきたようだった…。

ルギ「どれ、少し休憩するかな…。」

そう呟くとルギアはあげていた首を地面へと降ろし、
一息つくように口を半開きにする。

アーボの体が少しだけにゅるっと口の外へと垂れるが、
慌ててルギアははむっとずり落ちるアーボの体を口で抑える。
食べづらいとはいえ逃がす気は毛頭ないようだった。

…しゅぅぅ。

逃げられないことにまた少し絶望を覚えるが、
すっかり諦めたようにアーボは眼下に見える森の緑を見つめる。
彼が絶対の王者として君臨していたあの森も、
これで見納めかと思うと少し物悲しかった。

……ズブッ…ズブブッ……ズリュッ…グニュニュッ…ズブズブズブッ…!!

……うぎゅっ!?

突然に彼の体に異変が起こる。
先ほどまでは蠢いているだけだった膨らんだお腹の部分が、
今までとは比べ物にならないくらい強い力で押し出され、
まるで突撃するように彼の口の方へと喉を突き進んできたのである。

…ふぎゅぅっ!!ぐっ……ぐえっ…!

突如としてこみあげてくるようなその感触に、
さすがの彼も混乱してじたばたと暴れる。
だがこみあげてくる物体を止めるすべはアーボには残っていなかった。

うっぷ…うぶぅ……うぷぷっ!

みるみるうちにアーボの喉を膨らんだ塊がぐいぐいと押し上り、
彼はこみあげる吐き気を何とか口で紡いでとどめようとする。

だが押し上げてくるものの力の方が信じられないくらい強かった…。
とうとう固く結んだ口がこじ開けられるように開いていき、
彼はこらえきれずにその塊を吐きだした。

うぐっ…ぐぶぅっ…げぼぼぉぉぉっ……!

アーボの口からくぐもった音が鳴り響く。

アーボの口からどろっとした唾液の飛沫が糸を引いて飛び散り、
粘液だか胃液だか分からないぬるぬるとした液体にまみれ、
こげ茶色の毛並みの物体がアーボの赤い口の中からずるりと吐き出された。

グマ「げほっ…えっほっ…、で…でれたのか……。」

ドロドロに汚れ開けづらいまぶたをうっすらと開けながら、
アーボの口から吐き出されてきたマッスグマが掠れた声で呟いた。

飲み込まれアーボの腹の中で眠っていた彼だったが、
突然グニグニと彼のいる腹の中が激しく揉みほぐされ、
その衝撃で気を失っていた彼も目を覚ましたのである。

ルギアが何度も噛んで調べていたのが原因だが、
それはマッスグマには知るよしもなかった。

グマ「………。」

彼はしばらくそのままじっと横たわっていた。

アーボの体内は酸素も薄く、
頭がぼんやりとして気を抜けば再び眠ってしまいそうだった。
だがこのままここにいれば、
遅かれ早かれ彼の体は溶かされ栄養になってしまう。

さっきまではもうここで終わってしまってもいいかなとも思っていた。

アーボの体内はじんわりと温かくて心地よく、
包まれる胃壁も慣れれば軟らかく心地のいいベッドのようだった。
こんな快楽の中で溶かされるのならあるいは……。

彼は再びすぅっと目を閉じ、
ゆっくりとその快楽の中に沈んでいく…。
だがそんな夢心地にいた彼を、
再びあの容赦のないグニグニという衝撃が現実の世界に連れ戻した。

衝撃に意識を戻され目を開けて見れば、
あんなに居心地がいいと思ってしまったアーボの体内は、
薄暗くむっと獣臭い臭気にむせかえり、
ぐにゃぐにゃと蠢く肉壁が彼を取り込もうとゆっくりと包み込んできていたのである。


グマ「く…くぅ!」

マッスグマは正気に返ると、
朦朧とする意識の中で彼は無意識に身をよじりリュックの中に手を入れると、
中からねむりを取り去る力のある「カゴ」の実をとりだしそれを口の中に放り込んだ。

アーボの唾液や粘液が木の実にも手にもこびりつき、
気味の悪い味しかしなかったが構わず飲みこんだのである。

すぅーっと眠気が引いていき、
意識がはっきりしてきたものになると、
彼はなんとか脱出しようと胃袋の中でもがき始めた。
だがやはり体力自体は回復しきっていないのもあり、
どんなに暴れてもびくともしなかったのである。

グマ「はぁっ…はぁっ…くそ、だめなのか…!」

マッスグマは途方に暮れていた、
たとえ脱出する意欲が戻ってきても、
手だてがないのでは何もしていないのと同じである。

そしてこのまま何もできなければ……。

グマ「くっ………うぇ……!」

うなだれていたマッスグマだったが、
突如彼の体が逆立ちをするみたいに逆さになり、
彼自身の重みでずるっとしたに落ちそうになる。

何が起こったのか知らないが、
どうやらアーボの体が急に下を向いたらしかった。
これが…これが最後のチャンスかもしれない…。

グマ「仕方ない……あれをやるか……。」

意を決したマッスグマは最後の手段と言わんばかりに、
自分のお腹の前に両手を添えると、
その腕を力強く何度も何度も自分を鼓舞するかのように叩きつける。

【はらだいこ】

彼のもっている技の中で唯一の自分自身の力を引き出す技、
その威力は絶大で自身のもつ力を最大限まで引き出すことができるという、
彼の一族に伝わる秘儀でもあった。

ただしそのぶんリスクも多く、
この技を使うのにはかなりの体力が必要とされるのである、
しかも少しみっともないというか…恥ずかしい…。
そのためか彼は普段この技を極力使わないようにしていたのである。

だがこの状況、
もう恥ずかしいとか言っていられる状況ではなくなっていた。
何としてでもこのチャンスをものにする、
そう彼の旅人としての経験も、生物としての本能も告げていたのだった。

グマ「ぬぁぁぁぁぁっ!!!」

マッスグマは力強く叫び大きく息を吸い込むと、
まるで水の中でも泳ぐかのように肉の管の中をかき分けるように突っ切って行った。

脱出できるのが先か、自分が力尽きるのが先か、
ほとんど無我夢中で彼は駆け上がり、
アーボの喉をよじ登ると口の中から飛び出したのであった。

グマ「へへ……なんとか……たいりょく…もった…かな…。」

そう誰ともいわずにぽつり呟くと、
彼は再び暗い闇の中に意識を失った。

だが彼は、
まさか自分がさっきまでいた森のはるか上空にいることを知らなかった。

ずるりとアーボの口からすべい落ちた彼の体は、
唾液の糸を何本もひきながら力なく落ちていくのだった。

ヘビとトリ


食べ応えのあった獲物をごくりと喉を鳴らして胃の中に流し込み、
丸く膨れた腹がずるずると下に向かって蠢いていた。

アーボはぺろっと口の周りを軽く舐め、
満足そうに膨らんだお腹を尻尾で撫でる。
口の中にはまだ獲物の肉の味が余韻として残り、
満腹感に合わせて彼の気分を心地よくさせていた。

膨れたお腹から微かにコポコポと胃液の湧き出る音が聞こえてくるが、
最後まで抵抗してきたことに少しは敬意を示そうと、
彼は腹に少し力を入れて胃液が出るのを少し抑える。

まあ、
この心地い時間をもっと長く楽しみたいだけなのだが。

クァァァァァ………

そう考えながら、
アーボは大きなあくびをひとつする。

種族としての性質か、
彼は大きな獲物を食べた後は決まってこうして眠くなる癖があった。

この森に彼より強いポケモンはいないが、
かといってその辺で寝るわけにはいかないだろう。
やられる気はさらさらないが、
寝込みを襲われるのも決して気分がいいものではない。

もう一度大きくあくびをすると、
彼はするすると寝床へ向かって移動し始めた。

だが彼はまだ知らなかった、
この世界には彼なんかよりはるかに強い力を持った者がいることを。
しかもそんなとんでもない奴が今まさにこの森に来ているということを。

ずるっ…ずるずる……

ぷっくりと膨らんだお腹を引きずり、
うとうとと眠そうにしながら木の間をするするとくぐり抜けていく。

寝床についたらとりあえずゆっくりと眠り、
お腹の中のこいつを時間をかけてゆっくりと溶かしてやろう。
久しぶりに森に迷い込んだ旨い獲物である、
すぐに栄養にするのはちょっともったいなかった。

しゅるるる……♪

舌をちゅるっと鳴らし、
楽しそうに体を揺らしながら彼は大きな茂みの上をすぅーっと横切って…、
横切って……?

……?

アーボはぽかんとしたような顔になる。
今まるで空でも飛んだかのように茂みを越えた様な気が……。
彼は疑問の表情を浮かべながら地面の方を見る、
そして突如ぎょっと驚いたような表情に変わる。

驚くのも無理は無かった、
今まで地上よくても木をつたってぐらいでしか高い場所に行ったことのない彼の体が、
ふわふわと中に浮かびあがっているのである。

微かに彼の体に青白いオーラが漂い、
ゆらゆらと彼の周りで揺れている。

突然のことで呆けていた彼だったが、
慌てて彼は激しく体をくねらせたり、
尻尾を木の幹にしばりつけようとぐっと伸ばす。
しかし、
まったくといっていいほどなすすべがなかった。

「ふむ、活きのいいのがかかったみたいだな。」

ふいに頭上の空の方から間延びした声が聞こえると、
まるで釣り上げられた魚のように、
彼の体がびょんと飛びあがり青空めがけて飛んでゆく。

………!!?

いきなり空めがけて吹き飛ばされ、
おまけに彼の巨体が災いしてか突き出る木の枝がバキバキと折れ、
彼のつるつるした体にどんどんすり傷や切り傷が刻まれていく。

バキッ…バキバキ……メキメキ……バキッバキッ!!

そう長い時間もかからず、
アーボの体がすぽーんと森の上に飛び出すが、
それでも勢いは止まらずぐんぐんと彼の体が空高くへと昇っていく…。

「ふむ、その辺でいいぞ。」

…と、またさっきの声が聞こえたかと思うと、
彼の体がききぃっとブレーキがかかるように空中で静止した。

ぜえぜえと荒く息を吐き眠気も吹っ飛んだ彼だったが、
はるか下の眼下に広がる一面の緑の森を見てさらに息をのむ。
当たり前だが空からこの森の様子を見たのは初めてだったし、
空を飛んだことも初めてだった。

バッサ…バッサ…バッサ…!

ふと、
何か鳥の羽ばたくような音が聞こえ、
彼はうまく動けない宙できょろきょろと首だけを動かして辺りを見回……。

「む、どうした?私の顔に何か付いてるのか?」

アーボの口があがっと硬直したように開かれる。

彼のそばには、
彼なんかよりもはるかに大きく、
巨大な白い鳥がきょとんとした表情でこちらを見ていたのである。

マッスグマと一緒にこの森に来ていたルギアであった。

ルギ「ふ~む~…、取れたのは良いが妙に細長いな…。」

アーボの体をじろじろと眺めながらルギアはぽつりと呟く。

マッスグマと別れた後、
彼は一匹で森の上をうろうろと飛びまわり食べれそうな獲物を探していた。
しかし思った以上に森が深くしかも見通しが悪かったためか、
結局今まで一匹も獲物が見つからなかったのである。

そこでルギアは別の方法で獲物をとることを思いついたのである。
彼は地面が見通せる森の隙間のような場所を捜し出すと、
そこでじっと獲物が通りかかるのを待っていたのだ。

たまたまその彼が見張っていた地点をこのアーボが通りがかってしまい、
見つけるや否やルギアは【サイコキネシス】で無理やり引っ張り上げたのだった。
彼ぐらいにしかできない力技だった。

………!

ルギアがじーっと美味いのかどうか真剣に観察している中、
ハッとアーボの方が正気にかえる。
何が何だか分からないが、
このままじっとしていたらこの鳥に何をされるか分からなかった。

先手必勝と彼はすぅっと大きく息を吸い込むと、
ありったけの【どくばり】をルギアに繰り出した。

ルギ「む、あぶないな…!」

アーボの根伸ともいえる攻撃を、
ルギアは軽く虫でも払うかのように翼を振ってはじいてしまう。

一瞬ひるむアーボだったが、
かまわず連続で【へびにらみ】も繰り出す。
どんな相手だろうと彼の赤い目に視線を合わせてしまったものは、
必ず恐怖にすくみ身体の自由を奪えるこの技から逃げられるものはいない。

こんな見たこともない巨大な敵でも、
動きを鈍らせることさえできれば逃げる隙なんていくらでもある…はずだった。

ルギ「む~、食いごたえはありそうだが…。少し弱らせた方がいいか…。」

いくらアーボがにらみつけてもルギアの方には全く異常が起こらない、
むしろ【へびにらみ】自体がまったく効いていないようだった。

………!?

まるで彼のことなど眼中にもないように、
ルギアはアーボの攻撃をいとも簡単に受け流してしまう。
アーボがマッスグマのことを獲物としか見ていなかったように、
ルギアも彼のことを『食べ物』としか見ていないのであった。

多少の抵抗をされようが相手を食うということが最優先事項であり、
抵抗する側の必死の気持など微塵も感じずあしらうだけなのである。
まあある意味、
普段彼が彼の親友にしている仕打ちとそんなに変わらないのだが…。

だがその圧倒的すぎる力の差に、
アーボは口をパクパクとさせて絶句する。
今まで彼に敵う者などいないと思っていただけに、
この衝撃は相当なものであった。

ルギアの片翼が持ち上がり指先に青白いオーラが灯ると、
彼は指揮でもするようにひょいひょいとその指を動かす。

するとさらに強く【サイコキネシス】のオーラで彼の体を包み込み、
彼の柔らかい体が引き延ばされたり縮められたり、
かと思うと上へ下へとぶんぶん振り回されてしまう。

………!!!?

アーボの方もぐわんぐわんと体が揺さぶられ、
危うくうっぷと飲み込んださっきの獲物を吐きだしそうになる。
彼は必死にそれをこらえるが、
気持ち悪くなっていくのは止めようがなかった。


しばらくその状態が続き、
ルギアの指先に灯っていたオーラがすぅっと消えると、
動き回っていたアーボの体もようやく停止する。

視界がぐるぐると回転し、
体中がふらふらと揺れているアーボの前で、
ルギアはぺろっと舌で口元を舐める。

ルギ「しめしめ、そろそろ食べごろだな。」

ルギアがちょいっと軽く指を自分の方に曲げると、
ぐったりとしたアーボの体がふわふわと彼の顔の方に引き寄せられていく。

アーボはまだ視界の定まらない目でルギアの顔を睨みつけるが、
ふいにその白い顔がカパッという音と共に上下に割れ、
その中から真っ赤な口内とチロチロと蠢く桃色の舌先が見えた。

………。

さすがのアーボもその光景にびくっとひるむ。
普段だった彼の方が相手に恐怖を染み込ませるときに、
こうしてわざと口の中を見せつけていたのだが、
彼が見せつけられる立場の方になるとは夢にも思わなかった。

彼の浮かべている恐れた様な表情は、
彼が飲み下していった者たちが浮かべた恐怖の表情とそう変わらなかっただろう。

ルギ「じゃあそろそろ頂くぞ♪」

その言葉とともに、
ルギアはあ~んと大きく口を開くと、
バグッと躊躇なくアーボの尻尾に近いところにかぶりついた。

ルギ「……やはり味はあまりしないのだな…。」

ムグムグとアーボの体にむしゃぶりつくが、
たいして味のしないことに少しがっかりする。
とはいえゴムのような歯ごたえはそれはそれで新鮮で、
徐々にアーボの長い体がちゅるちゅると口内に引きずり込まれていく。

………!!

体中にルギアの舌がぬるぬると這わせられる感触にぞっとしながら、
アーボは口の中から脱出しようと無我夢中で体をよじらせる。

ルギ「こらこら、あんまり動き回ると変に噛んでしま…。」

ガリィッ……!

ルギアがのんびりした声でアーボを諭すように声をかけるが、
その言葉の途中でアーボを咀嚼していたルギアの歯が強く噛みしめてしまう。

ギャッ…!

ルギ「おお、すまんな。」

あまりの痛みに思わず悲鳴があがるが、
ルギアは軽く一言謝っただけですぐにムグムグと噛む作業に戻る。

一応悪いと思ったのか噛んでしまったところを慰めるべく、
舌先でレロレロとアーボの腹を舐め傷を労わってやる。

…すると。

……ぷにっ。

ルギ「…む?」

ふと舐めていたアーボの腹の一部に、
何かおかしな膨らみがあることにルギアは気がついた。

まさかその中に親友であるマッスグマが入っているとは、
ルギアでさえも夢にも思わず、
彼は不思議そうにその場所を舐めたり噛んだりしている。

ルギ「…なんだ…この感触は?」

ムニムニと面白がるようにその部分を何度も噛みしめるが、
そのたびにアーボはうっぷとかうぐっという苦悶の声を出す。
アーボにしてみれば、
食べた獲物を喉に逆流でもさせているかのように圧迫感があったのである。

ルギ「何か気になるが……まあいいか。」

やがて飽きたのかルギアはその膨らみをいじるのをやめる。
多分中に何かアーボの食べた獲物が入っていると思うのだが、
それなら一緒に飲み込んでしまえばいいだけである。

ルギ「さて、十分楽しんだしそろそろ飲み込んでしまうか…!」

ルギアはじゅるっと口にたまった唾液を飲み込むと、
舌を使ってぴちゃぴちゃとアーボの体に唾液をすりこんでいく。
これだけ長い体だと喉で引っ掛かりそうなので、
彼は念入りにアーボの体を舐めあげていた。

アーボは弱り切ったように口の端のもたれかかっていたが、
少しずつずりずりと口の中へ引きずり込まれてゆく。
彼の体がこの白い鳥に飲み込まれ、
栄養となって消えていくのにはそう時間はかからないようだった。

だがこの時、
ルギアもアーボもまだ気が付いていなかった。

すでに喉の奥へと落ちかけたアーボの尻尾の方の腹、
そのぽってりと他よりも膨らんだその腹の部分が、
まるで喉の方にせり上がっていくようにずりずりと蠢いていたのだった…。

小説の流れをぶった切ってしまうけど、
もう10月の中盤を超えてしまうのでリクエストのまとめを更新です。
お待たせしすぎるのイクナイ!

50000ヒットの記念企画に、
『拍手イラストのリクエスト』という企画を行わせていただきました。

それぞれのリクエスト品を、
こちらで展示させていただきます。
(一緒に載せさせていただいた拍手メッセージ付き。)

※お持ち帰りは一応リクエストしてくださったご本人様のみですが、
それ以外の方はこっそりお持ち帰りをお願いします。(←なんだそりゃ


※リクエストされた方で携帯で拍手が見れないという方は、
ご連絡いただければこちらに一足お先に追加いたしますので、
お気軽にご連絡ください♪
(・ω・)

唾液と粘液


アーボの口が唾液の飛沫を飛び散らかせながら大きく開き、
彼の胴体に締め付けられているマッスグマの頭に覆いかぶさるようにかじりついた。

グマ「うむ……。」

マッスグマの顔にどろっとした唾液が垂れるようになすりつけられ、
ぴちゃぴちゃと粘着質な音を響かせながら彼の頭が口の中へと消えていく。

アーボのほうもマッスグマの味を気に入ったのか、
まるで急かされるように彼の体を口内に押し込んでいた。

グニュ…グニグニ……グニグニ……

普段食べられ慣れているルギアの口に比べ、
アーボの口の中はマッスグマにはやや狭く、
ゴムのように軟らかいアーボの頭が彼の体ぶん膨らんでいる。

マッスグマの体がお腹まで飲み込まれ足と尻尾が力なくゆらゆらと揺れている。
じっとしているだけでも大きな舌が彼の体に押し付けられ、
だんだんと呼吸をするのも苦しくなってくる…。

グマ「グ…グハッ…ゲホゲホッ!」

飲まれるままぐったりとしていたマッスグマだったが、
舌が顔にかぶさりさすがに苦しそうにむせかえる。

幸いにもそれで意識が戻ったのか、
彼はうっすらと目を開く。

グマ「うえ…こ…ここは……うわ…。」

目を開いたマッスグマが最初に見たのは、
ぐにゃぐにゃと蠢くアーボの喉とその奥に続く真っ暗な穴だった。
天井から絶えず流れてくる唾液がその穴の奥にも流れ落ちていき、
ぬらぬらと滑りやすくなったその穴に落ちたらもう戻ってこれそうに無かった…。

…ゴクッ

その光景に思わずマッスグマも唾を飲み込む、

いくらルギアに何度も食べられているとはいえ、
彼自身当たり前だが食べられることが好きなわけではない。
飲み込まれかけている彼には目の前に広がる暗い穴は恐怖しか感じられなかった

さすがにその光景を見続けるのは嫌なのか、
狭い口内の中なんとか体をよじり仰向けに寝返る。

グマ「ぐ…くそぉ…だせよ…!」

マッスグマは弱々しく口内の壁を叩くが、
やはりまだすいみん草の効力が抜けきっていないのか、
ほとんど力を出せなかった。

アーボはそんなマッスグマの体をを、
うるさいといわんばかりに舌で口内の天井に押し上げる。

グマ「うぁ…があっ…。」

軟らかいアーボの口内とはいえ、
舌の力が強くマッスグマの体に圧力をかけ、
視界がちかちかと明滅する。

その間にも彼の体はちゅるちゅるとアーボの口の中に入っていき、
尻尾以外の全てが口の中に飲み込まれ、
アーボも満足そうに顔を歪めて笑う。

グマ「ぐぅっ……うぁ…。」

締めあげられていたマッスグマだったが、
ふいに舌の力が緩み彼の体が舌の上に横たわる。
ぜぇぜぇと苦しそうに呼吸をするが、
そんな彼にアーボの唾液が容赦なく浴びせかけられていく。

グマ「うえっぷ…げほっ…!」

マッスグマは動く範囲でなんとか身をよじり、
すぅっと大きく呼吸する。

口内の空気を吸いながら鼻をひくつかせると、
淀んだ臭気を放つアーボの口内は、
うっすらと血のような鉄の臭いが立ち込めていた…。

グマ「はぁ…はぁ…やっぱ嫌な臭いだな……。」

マッスグマは横になりながら嫌そうに顔をしかめる、
ルギアもそうだがやっぱりここの空気が一番慣れなかった…。
なにせ漂うこの臭いの中には、
呑まれ溶かされていた者たちの残り香も混じっているのだらうから…。

考えていたマッスグマの口に垂れてきたアーボの唾液が入り、
口中に広がる不快な味に思わずぺっぺと吐き出す。

グマ「げぇ…変な味…。」

嫌そうに垂れてくる唾液をぬぐうが、
後から後から垂れてくるためあまり意味は無さなかった。

ふぅっと疲れたように息を吐き、
マッスグマは舌の上で静かに寝そべる。

尻尾のほうも先端近くまで飲み込まれ、
多分後もう少しすれば彼もこの臭いの仲間入りをすることになるのだろう。

グマ「はは……さすがに今度ばかりはダメそうだな…。」

マッスグマはぽつりと呟いた。

今までも何度も飲み込まれてきたが、
それは相手が親友であるルギアだったからである。

しつこいぐらいに彼を何度も飲み込んできたルギアだが、
さすがに溶ける寸前になるといつも吐き出してはくれていた。
…もっとも本当に溶ける寸前ぎりぎりなことの方が多かったが…。

グマ「もう…あいつの顔を見ることも無いのかな…。」

今回の相手は飲み込んだ彼を絶対に出してはくれない、
いやむしろこれが本来の喰うものと喰われるものの関係なのだろう…。

アーボが勝ちマッスグマが負けた、
だからアーボが賞品代わりに彼を喰い、
飲まれた彼は腹の中で溶けてアーボの栄養となって消える。
それで終わり……終わりなのである。

ずりゅ…ずりゅりゅ……んぐんぐ…ちゅる……

とうとう彼の尻尾の先までアーボの中へと収まり、
アーボの頬張る頬が彼の体積分ぷっくりと膨らんでいる。

そしてアーボの首がぐっと伸ばされると、
本格的に彼を飲み込もうと上に持ち上げていく。
その動きに合わせて口の中のマッスグマの体も背中の方から喉の奥にずり落ち、
アーボの口からわずかに見える外の景色が遠ざかっていく。

グマ「いやだな……。」

マッスグマは必死に力の入らない腕を伸ばし、
アーボの喉に手足をつっぱりその場にとどまろうと踏ん張る。

なぜ抵抗するのかよく分からなかった。
今までの経験上、
体が全て収められた今から抵抗したところでもうあまり意味は無い、
遅かれ早かれどの道飲み込まれてしまうのだろう。

頭では完全に理解をしている、
でもなんだか少しでも長く生き延びたかった。

しかし無慈悲にアーボが首をぶるんと振ると、
あっけなくマッスグマ腕はずるりと滑り、
暗い穴の奥へと滑り落ちてゆく。

グマ「う…わ……うわあああああ……。」

マッスグマの体はずるずると滑るように落ちていき、
胃袋へ向けて下へ下へと運ばれていく。

必死に壁に手をあてるが、
粘液に濡れた肉壁は触れただけでぬるぬると滑ってしまい、
落ちる速度さえ緩まらなかった。

アーボの喉は口の中と同じように狭く、
密着するように肉壁が締め付けてくる。

分厚い喉が容赦なく彼を飲み下していき……そして。

ずずず……ずりゅっずりゅっ…ずりゅりゅ………ゴックンッ!

アーボの喉がひときわ大きい音を響かせ、
ついにマッスグマの体が胃袋の中に落とし込まれてしまった。

彼は胃の中で丸まるように横になり、
そんな彼の体にも容赦なく胃壁が締め付けてくるが、
少し力を込めれば簡単にたわむためか、
そこまで不快感は無かった…。

むしろ、
すいみん草によるねむけも手伝って、
じんわりと暖かい胃の中はうとうととするくらい心地いい……。

そこで彼はぶんぶんと必死に首を振って眠気を覚ます。

グマ「う…だめだ…ここで寝たら…もう二度と……。」

もちろん彼は胃袋の中がどんなに恐ろしい場所か分かっている、
ここで眠ってしまったら次に起きれる保障は無いだろう。
だが思いとは裏腹に暖かい胃の中ではどんどん眠くなってくる。

体力自体ももうほとんど残っていない彼には、
すでに意識の方も限界に近かった。

薄れていく意識の中、
彼は意外にもルギアのことを思い返していた。

いつも何を考えているのか分からず、
変わり者の中の変わり者だと思っている彼の親友。

でもそんなあいつは、
彼がいなくなったらどんな反応をするのだろうか?
悲しむのだろうか、
それともいつもと変わらないまま、
時間と共に彼のことも忘れてしまうのだろうか?
どっちの反応をするのか見て見たいとさえ思う。

でもどうあがいても彼にはそのルギアを見ることはできない、
むしろ普段通りのあいつさえまた見ることができるかどうかさえ分からない。

そう考えるとなんだか寂しいなと、
彼は場違いにもクスッと笑った。

グマ「ごめんな…もう…会えそうにないかも…な…。」

マッスグマの目からぽろっと一粒の涙がこぼれ落ちる。
死ぬことへの恐怖のためか、
それとももう親友に会えないことへの悲しさからか、
涙の理由は彼以外の誰にも分からなかった。

そして彼は静かに目を閉じると、
快楽に沈むように暗い虚無の世界へと意識を手放すのだった。

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★ プロフィール
HN:
森クマ
性別:
男性
自己紹介:
展示するのも恥ずかしい物しか置いていませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
(・ω・)

諸注意:
初めてきてくれた方は、
カテゴリーの『はじめに』からの
『注意書き』の説明を見ていないと
色々と後悔する可能性大です。
(・ω・´)

イラスト・小説のリクエストは
平時は受け付けておりません。
リクエスト企画など立ち上げる際は、
記事にてアナウンスいたしますので、
平時のリクエストはご遠慮くださいませ!
(・ω・`)

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更新日 2014年  1月17日
  少ないけどとりあえず新規イラストに変更
  一枚オリキャライラストなので苦手な方注意

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