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こぼれる水
 
ニドリーノの体が完全に口内に収まり、
ゴクリという音とともに大きな塊がのどを滑り落ちていく。

ヘル「やれやれ、これで任務完了だな。」

一連の光景を見ていたヘルガーが、
口元をぬぐうニドキングを見ながらつぶやいた。
声こそニドリーノと話していた時と同じ調子だが、
彼は心の中でニドキングを畏怖していた。

ヘル『捕食兵器とはよく言ったものだな、感情が消えているとはいえ自分の身内ですら容赦なく呑み下す様は確かに戦士とい言うより兵器に近い・・・。』

冷や汗を流しながらも彼は一連の光景を瞬き一つせず観察をしていた、
彼の任務は『裏切り者の隠滅』の他に『捕食兵器の実践観察』も含まれていたからである。

ヘル『結果は良好というところだろう、むしろこの暗示の効き目は想像以上のようだな。』

ニドキングの受けた暗示、
暗示にかかったものの食欲を増強させるという催眠術で、
これを組織の有能な戦士に使用すれば『丸呑み団』の戦力は今よりも格段にアップするだろう。

しかし、
ヘルガーは内心では不安を感じていた。

ヘル『確かに奴の裏切りを阻止し、さらに実験のデータを取るという点だけを見れば今回の任務はどこにもおかしな点はないが・・・。』

ヘルガーはニドキングの背中を見つめた、
ニドキングは多き膨らんだお腹を満足そうにぽんぽんと叩いているようだ。

ヘル『だがこんな命令、以前の組織なら決して出されることはなっかったんだがな。』

そう、以前の組織ならニドリーノを捕えろというような任務は下されても、兵器の実験隊にしろというような非道な命令は下されなかっただろう。
現にこう言った任務を請け負ってきていたヘルガーも今回のようなケースは初めてのことだった、
もしもニドリーノが大人しく考えを変えていたら、
あるいはそのまま連れ帰っていたかもしれなかった。

ヘル『やはり、組織が変わろうとしているという噂は本当だったのか・・・?』

以前とはやり方を変えようとしている組織、
それに対して疑問の声を上げる団員はこれからも出てくるだろう、
そのたびに彼はこの兵器とともに隠滅に向かわされるだろう。

ヘル「・・・まったく、難儀なことだ。」

長い思考を終えてヘルガーは意識を現実に戻した、
彼の『ほのおのうず』で塞いでいた通路も少しずつ火の勢いが収まってきていた、
この分なら消火するまでもなく勝手に消えるだろう。

ヘル「では私は先に戻っているぞ、お前も落ち着いたら訓練室まで戻ってくるんだ。」

未だにお腹をさすり続けているニドキングを一瞥すると、
ヘルガーは薄暗い通路を引き返して行った。


ヘルガーがいなくなった後もニドキングは変わらずお腹をさすっていた、
ニドリーノを飲み込む前と変わらず、
体からうっすらと黒いオーラをただよわせ、
口からあふれる唾液が糸を引いて床に落ちていた。

先ほどと違っていたのは、
ニドリーノの体の大きさ分にぽっこりと膨れたお腹、

そしてぽたぽたと頬をつたって流れ落ちる涙だった。


なぜ泣いているのかニドキングには分からなかった、
むしろ目からあふれ落ちていく水がなんなのかさえ今の彼には分からなかった。
ただ訳も分からずに泣いていた、
さすっても反応のないお腹をさすりながら泣いていた。

彼一人しかいない薄暗い通路の中で、
こぽこぽと消化の始まるお腹の音と、
止めることなくあふれては落ちていく涙の音とともに、
ずっとずっとニドキングは立ち尽くしていた・・・。

ここまで読んでいただいた方、
お疲れ様でした。
とりあえず今回のシリーズはここまでです、
長かった・・・。
(。ω。)

ダークっぽい展開を目指した結果、
今回のシリーズが出来ましたがいかがだったでしょうか。

まあダークっぽいといっても、
あくまで私にとってのダークな雰囲気がこんな感じのものですって感じです。
きっちりした定義なんてないから、
きっとこれでいいんだよ。
・・・たぶん。

とりあえずあんま長くなるのも何なんで、
ここでいったん区切って、
解説的なものは別の日記にまとめて後で上げますね。
たぶんそんな時間はかからないと思うけど、
どうかな・・・?

では長かったですが、
ここまで見ていただきありがとうございました!
(・ω・)ノシ
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更新日 2014年  1月17日
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