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見つけた…。

下水道の奥の奥、
手配書に乗ったいかついポケモンが一匹でぽつんと座り込んでいた。
僕達はいきなり攻撃されてもいいように警戒しながら近づく、
すると相手はこちらに気がついたのかゆっくりと顔をあげた。

僕達は一瞬混乱した、
相手の表情は捕まることへの焦りでも、
僕達に対する恐怖でもどちらでもない。

安堵

まるで助けが来たとでも言わんばかりに、
その顔はぱぁっと明るくなりぱくぱくと口を開けたり閉めたりしている。

「助けてくれ、早く…早くここから連れ出してくれ!」

彼は僕達に救いの手でも伸ばすかのように、
立ち上がり僕達のもとへ駆け寄ってくる。

だけど、
僕達と彼の間に何か壁のようなものが急に伸びあがり、
彼の悲鳴が暗い下水道に反響するように響き渡った…。




 
べちゃあ…!
 
じめっと湿った空気の漂う地下の下水道、
その道をゆらゆらとほのかに輝く炎を揺らめかせて、
リザードがとぼとぼとひとりぼっちで歩いていた。

ずいぶんと疲れているのか、
はぁはぁと浅い呼吸を何度も繰り返し、
時折ふらつくように足がもつれそのたびに壁に手をついて体を支える。

リザ「はぁはぁ、やっぱり変だよ…。」

彼の手には何本ものきのえだが握りしめられている、
仲間たちと別れ、
ルカリオの言うとおりに点々と落としておいた道しるべである。

トイレをすませ、
彼は急いで仲間たちのもとへ戻るべくこの目印を拾い集めながら、
心細いのをこらえてここまで歩いてきたのである。
しかし、
歩けど歩けど一向に仲間たちの姿が見えてこず、
そのうえ気のせいさっきは通っていなかった場所を、
ぐるぐると歩いているような気さえするのである。

リザ「ここ…、本当にさっき通ったっけ…?」

一度足を止め呼吸を整えながら、
リザードは辺りを見回し景色を思い出す。
だがこの地下水道の道はどこも同じような作りだし、
急いでいた彼が通った道を正確に覚えているわけでもなかった。

リザ「…間違ってるわけないよね、
    きのえだちゃんと落ちてたんだし…。」

彼は自分に信じ込ませるようにぎゅっときのえだを握り締める、
きっと仲間たちの進む速度が速すぎて追いつけないだけなんだと信じ、
彼はふたたび暗い道を歩き始める。

そうでもしないと不安で押しつぶされてしまいそうだったのだ…。





どれくらい歩いただろうか…

リザ「……うそ。」

リザードは正面を見つめたまま絶句し立ちすくむ、
なぜなら彼の目の前にはいくつものパイプが走るだけの壁、
すなわち行き止まりしかなかったからである。

そこに彼の見知った仲間たちの姿はどこにもなかった…。

リザ「…なんで、目印はちゃんとたどってきたのに…。」

彼の両手には数えきれないほどたくさんのきのえだが収まっている、
すべて彼がここまでに拾って来た目印のはずだった。
彼の仲間たちが進みながら落として行っているはずの目印が、
なぜ行き止まりで途絶えているのだろうか。

リザ「仕掛けとか…無いよね…?」

彼はすがるような思いで壁をぺたぺたと触ったり、
空いた手で叩いてみたりと思いつく限りの方法で壁を調べる、
しかし結局何も起こらず彼は途方に暮れてしまった。

リザ「どうなってるんだよ…。」

彼はずるずると崩れ落ちるに座り込む、
すでに足はガクガク震えるほどに疲れ切っており、
体力もほとんど使いつくし、
ぜえぜえと荒い息が口から洩れてきていた。

なにより、
仲間たちと合流するという意気込みだけでここまで歩いてきた彼に、
目の前にある信じたくない現実が厳しすぎたのかもしれなかった…。

リザ「ルカリオ…ライボルト…、どこにいるんだよぉ…。」

彼はどこに行ったか分からない仲間たちの名前を泣きそうな声で呟く、
名前を呼べばもしかしたら出てきてくれるかもしれないと、
僅かな希望をこめて仲間の名前を何度も呟いた。

「おぉぉぉぉ…。」

リザ「…!」

微かに何かの声がリザードの耳に聞こえた、
しかしそれは到底仲間たちの声ではない…。
もっと低い唸るような声だった。

リザ「……誰…!」

リザードはきっと目つきを鋭くし、
もと来た通路の方を目を凝らして睨みつける。

ずるっ…ずるっ……

どこからか分からないが、
まるで何かを引きずりながら這っているような音が、
彼のもとに近づいてくる。

静かなこの地下ではその音が不気味に反響し、
正確な位置までは彼には分からない…。

リザ「くっ!」

リザードはすくっと立ち上がると、
背後を取られないように壁際に体を近づけ、
通路の方から来るものだけに集中する。

心身ともに疲れ切り仲間ともはぐれて孤立しているとはいえ、
彼とてシルバーランクの探検隊の一員である、
こういった状況でどうすればいいかぐらいは心得ているつもりだった。

ごくっ…

彼は焦る気持ちを抑えて唾をのみこみ喉を鳴らす、
一匹での戦闘も何度かはやったことはあるものの、
それはルカリオやライボルトの指示やアドバイスがあったからこそである。


正直いって、
彼はあまり自分から戦いを仕掛けたり、
逆に自分だけで戦術を考えるというのは苦手であった。

彼の考える戦術なんかよりも、
他の二匹が考える方法の方が何倍もうまくいくし、
頼りになるからである。


だから今自分の取っている対応が正しいのかどうか、
彼には分からない。
その不安が彼の恐怖をさらに強くして行っていた…。

リザ「く…、来るなら来てみろ…!」

彼はとにかく不意をつかれないよう、
ぶんぶんと首を振って余計な考えを捨て守ることだけを考えた。
彼一匹で戦い抜くよりも、
隙をついて逃げた方がこの場はいいと判断したからだった。

ずるぅっ…ずるずる……

不気味な音が近づいてきて、
彼の背筋にもつーっと冷たいものが走るような感覚が通った。

とにかく最初の攻撃をよけること、
最初さえよけさえすれば逃げるにせよ戦うにせよ、
いくらでも対応することができるはずだった。


その考えは決して間違ってはいなかった、
しかし彼には敵の攻撃を避けることはできなかった。

敵の方がリザードよりも何倍も狡猾だったのである。


ずるぅ……どろおぉっ…べしゃぁあっ!!

リザ「え…、う…うわぁぁ!?」

リザードの体に突然紫色のドロドロとした物体が、
彼にのしかかるようにべっとりとひっついてくる。
意志を持っているかのようなその生き物は、
彼の背中から体中に這いまわり、
顔や手足に覆いかぶさっていく。

リザ「うぁ…なん…うぶむぅ…!」

突然の襲撃者に何の抵抗もできず、
リザードはされるがままに体の自由を奪われていく。

よけることなんてできなかった、
襲撃者は壁に走ったパイプの中を通って彼に近づいていたのである。

予想外の場所からの攻撃に反応することのできなかったリザードは、
すでに両手足が謎の物体に呑みこまれ、
反撃することも逃亡することもできなくなっていた。

リザ「むぶっ…うっむ…むぅ…!」

彼の体が頭から足まで紫色のドロドロに包まれる、
ひんやりと冷たいその物体が彼の口や鼻を押さえつけ、
息をするのも困難になってくる…。

リザ「むぐっう…うぐぅぅ…むっ!?」

リザードは必死にもがき何とか襲撃者を引きはがそうと、
顔中にくっついてくる物体を無理やり両手でつかもうとする。
しかし抵抗しようとしたその刹那、
彼の体はまるで【かなしばり】にでもあったかのようにぎしっと強張り、
腕どころか指一本すら動かせなくなってしまう…。

リザ「う…むぅ…。」

段々と息が苦しくなってきて、
頭の中がぼんやりと霞んでくる。
すでに敵は彼の尻尾の先まですっぽりと包みこみ、
まるでリザードサイズの紫のゼリーでも立っているかのようである。

襲撃者は彼の体にぐにゃぐにゃと絡みつきながら、
彼を下水の水際まで引き寄せていく。
どうやらリザードを水の中に引きずり込む気のようである。

リザ「…。」

途切れる寸前の意識の中、
彼の心の中では最後まではぐれた仲間たちの心配をしていた。

こんな化け物がこの水路にいる以上、
彼は自分のことより他の仲間の方が心配だった。

リザ(ルカリオ…ライボルト……。)

最後にもういちどだけ彼は仲間たちの名前を呟いた、
せめて彼らが無事にここから出ていることを信じて…。

そこで彼の意識はふっと消え失せ、
ザブンと水しぶきをあげて彼を包んだ生き物は水の中に消えていく、
しばらく水面に浮かんでいた泡もやがて水に溶ける様に見えなくなった。


リザードのいた場所には、
彼の拾って来たきのえだが寂しくぽつんと残されて転がっていた…。

その3でございます、
というわけでここまで読んでくださった聡明な方なら、
今回の捕食者が分かってしまったかと思いますが、
ネタバレなしに言えば今回のシリーズは『取り込み捕食』というやつです。

ちょっと他の捕食も描いてみたくてこの捕食方をチョイス、
やはり捕食にも好き嫌いあると思うので、
苦手だった方はごめんね。

あがっあがっ!(涙)

申し訳程度に落書きをぺたり、
某様のリザードンの口に激しく萌えさせて頂いたので、
負けじと大きく口を開けてもらった絵、
…だったはずです。(途中までは)

うん、あれだね。
色々と身の程をわきまえろってことですね♪
分かります。orz

明日はちょっと私用があるので多分更新できないです、
申し訳ありません。
(・ω・`)
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無題
取り込み捕食とか素敵すぎです。
吸収&同化とかも大好きの変態ですので^q^
南国 2009/06/25(Thu)01:35:33 編集
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