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ぶら~ん…
 
ガサガサ…!

ザングースがぺろぺろと手についた甘い汁を舐めていると、
突然近くの茂みが擦れるような音を立てた。
ぴくっと耳を立て立ち上がると、
彼は音のした茂みの方を見て警戒する。

ガサ…ガサガサ…!

ザングースが睨んでいると、
茂みの中からでっぷりと丸いピンク色の生き物が現れる。
その生き物はザングースの方を見ると、
口からベロンと大きな舌を出して口元を舐めた。

ザン「こ…こいつは。」

突然現れた来訪者にザングースは戸惑いを隠せない、
食事の終わった直後だったせいか警戒を忘れてしまっていたせいだった。
しかもクンクンと相手の生き物がしきりに匂いを嗅いでいるところを見ると、
彼の手についた甘い香りがあいつをここにおびき寄せてしまったらしかった…。

ザン「旅人…それとも野生?」

相手は『ベロリンガ』と呼ばれるポケモンだった、
この辺に村は彼の住む村しかないはずだから、
村人以外のポケモンは野生のポケモンか旅人かのどちらかだった。

しかし、
獲物を見つけたとでも言わんばかりに意地悪くにぃっと笑みを浮かべた相手が、
理性のある『旅人』だというのは考えにくい…。
この森に住む野生のポケモンと考えて間違いなさそうだった…。

ザン「…くっ!」

ザングースは腕を前に構えて威嚇するように臨戦態勢を取る、
こちらが戦う意思を見せれば怯えて逃げていくかもしれないと思ったからである。
だが、
彼が戦う意思を見せたとたんベロリンガの方もぐっと腕を突き出し、
くいっと手を曲げるその様子はかかってこいといわんばかりである。

ザン「う…。」

ザングースは内心冷や汗をかきながら、
ベロリンガの様子をじっと観察する。
野生のポケモンは凶暴なものが多く、
遊びレベルのバトルしかしたことのないザングースがどれだけ戦えるのか分からない。
逃げるか戦うか早く決断しないと酷い目にあいかねない…。

瞬間、
ベロリンガはその長い舌をザングースに向けて勢いよく伸ばしてきた。

ザン「え…うおっ!」

すんでのところでザングースは舌ベロを腕で払いのける、
ぬるっとした唾液の感触が手に伝わってきて、
思わずぶるっと体が震えた。

最初の攻撃を弾かれたベロリンガだったが、
そのまま同じように何度も舌ベロを勢いをつけて伸ばしてくる。
彼もそのたびに舌を払いのけたり掴んで止めたりして、
なんとか攻撃を防いだ。

弾き返されるたびに舌ベロは方向を変え、
左右上下関係なくザングースに襲いかかる。

ザン「っ…はぁはぁ、何回同じ攻撃すれば気が済むんだ…?」

少しづつ息を切らしながら、
ザングースはしつこく攻撃してくるベロリンガの舌をまた弾き返す。
まるでキャッチボールでもしているかのように、
何度も飛んでくる舌を投げ返してはそのたびに玉のように浮き出た汗が飛び散った。


数分後…

ザン「はぁ…はぁ…。」

もう数十回は繰り返されただろうか、
何度も激しい運動をさせられたザングースは苦しそうに呼吸をし、
膝に手を当てながら次の攻撃に備えてベロリンガを見る。

ザン「…な!?」

ザングースは目を見開いて驚く、
なぜならベロリンガはバテているどころか、
呼吸一つ乱さず平然と最初と同じ位置に立っていたからである。
ザングースだけがぜぇぜぇとスタミナ切れを起こし、
敵はまったく疲れていないのだから彼が驚くのも無理はない。

それもそのはず、
ベロリンガは舌ベロの動かす方向を変えていたぐらいで、
彼自体はほとんど移動していないのに対し、
ザングースは攻撃が来るたびにその攻撃を防いだり、
避けてかわしたりとベロリンガよりも多くのスタミナを消費しているのである。
あきらかにベロリンガの作戦勝ちであった。

ザン「そんな…。」

そのことに気づくと、
バトルのレベル差をはっきりと感じとり、
ザングースの目に絶望の色が浮かんでくる。

パシッ…!

ザン「…っ!」

彼が呆然としている隙をつき、
ベロリンガの舌ベロが速度をつけて彼の足を払い、
ザングースは前のめりに地面に倒れ込む。

ザン「ぶっ…!」

口の中に地面の土や草が入り込み、
慌ててぺっぺっと口から吐き出す。
ザングースは体勢を立て直そうと、
ふらふらする体を支えて立ち上がろうとする。

その途端ザングースの足にぷにっとした感触が巻きつく、
見るとベロリンガの舌べろが彼の片足に巻かれ、
ベロリンガも顔ににやっとした笑みを浮かべる。

ザン「うわあっ!?」

急にザングースの体が宙に持ち上げられ、
片足の逆さづりの状態でぶら下がった格好になる。

ザン「くそ、放せ!」

彼は必死に手を伸ばして舌を引きはがそうとするも、
ぶら下がった状態では簡単に足まで手が届かなかった。

ぶんっ…!

っと勢いよく彼の体が一瞬重力を失ったかのようにあおられると、
そのまま振り子のように勢いよく地面に叩きつけられた。

ザン「うがぁぁ!!」

ザングースの口から悲鳴とも喘ぎとも区別のつかない声が漏れる、
肺の中の空気が塊のまま絞り出されたかのように吐き出され、
げほげほとむせ返った。

【たたきつける】

ノーマルタイプのポケモンの技で、
命中率が低いものの威力が高い技である。
しかし、
バテて動きの鈍くなった彼には到底よけることができず、
足を拘束されていたらなおさらだった。

ザン「あぐぅ……!」

体中がみしみしと嫌な音を立てるが、
ベロリンガは構わずまた彼の体を持ち上げるとまた【たたきつける】をくりだす。
あいてははザングースの体力が尽きるまで、
何度も地面に彼の体を振り下ろし、
弱るのを待っているようだった。

ザン「げほっげほ……かはぁ…はぁ…。」

最初は抵抗しようとしていた彼も、
何度も打ちつけられていくうちにぐったりと体から力が抜けていく…。

ザン「が…ぁ…。」

息も絶え絶えにだらりと彼の体が抵抗なくぶら下がるようになると、
ようやくベロリンガは巻きつけていた舌をしゅるっと離し、
どさっと音を立ててザングースの体が地面に横たわる。

ザン「ぜぇ……ぜぇ……。」

朦朧とする意識の中でザングースはぼんやりとベロリンガを見つめる、
見かけによらず強い相手に手も足もでなかったせいか、
悔しいとかを考えることはなかった。

むしろ気になるのは、
これからこいつは自分のことをどうするつもりなのかということである。
ザングースはゴクッと唾を飲み込む。

彼は昔村の大人に言われたことを思い出す、
野生のポケモンの中には自分達と同じポケモンを食べてしまう者もいるということ。
村の子供だったら小さい時に村の外へ勝手に出ていったら、
悪いポケモンに食べられてしまうということ。

村に住むポケモンだったらそんな話くらい誰でも知っていた。
でもそれは大人たちが子供を叱りつける時に使うしつけ文句で、
ポケモンがポケモンを食べるなんて話あるわけないと彼はずっと思ってきた。

でも実際はどうなってしまうのだろう…?


ザングースが薄れる意識の中でぼんやりそんな事を考えていると、
視界の端でピンク色の生き物が口から体とおんなじピンク色の物体を、
しゅるしゅると出しているのが見える。

その生き物の顔は、
見たこともないような冷たい目で彼のことを見つめていた…。

その3です、
今回はバトル分の多めに!
多分次辺りから捕食関連のお話になります、
捕食部分も好きだけど、
こういうバトル物も結構好きですよ。

ポケモンはバトルしてなんぼですね、
もともとそういうゲームだしね、
寄り道できる場所が一杯あるから本筋忘れやすいけどねー。

そういえば、
ベロリンガってずいぶん前に一度描いているんですよね、
この子は目が一番描きづらいなぁ、
目って顔のパーツの中で苦手な部分の一つです。

まぁ結局は練習あるのみです、
彼や世界一人気な電気鼠のようなくりくりな目って書きづらいの私だけですか。
きっと同志は他にもいるって信じたい。
(・ω・;)
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